2015年9月23日水曜日

原子力防災訓練に関する北海道庁回答について当会の分析

2014年12月24日に、泊原発の廃炉をめざす会 防災・避難プロジェクトチーム、ベクレルフリー北海道、地方自治を考える市民の会の連名で高橋はるみ知事あてに提出した質問に対し、道庁よりいただきました回答文書を本ブログにて公開しております。

以下は、いただいた回答についての、当会・ベクレルフリー北海道による簡単な分析と報告です。

お読みになるにあたっては、回答書の全文及び添付資料を適宜ご参照戴ければ幸いです。

2014年末の知事宛て防災関連質問・要望文書に対する知事からの回答の分析について、
簡単な報告

地方自治を考える市民の会 深町ひろみ
ベクレルフリー北海道 マシオン恵美香

北海道における原子力防災対策の現状の問題点を明らかにするべく、
Ⅰ.
まず当該回答文書の個々の回答を、 
1.「現時点での避難対策の不備を浮き彫りにする回答と、その回答から読み取れる不備」、
2.「不備を数値的に示す具体的 な例」、
3.「将来にわたり対応が不可能または著しく困難な部分を浮き彫りにした回答と、その回答から読み取れる対策不可能性」
の観点から整理するよう試みた。

Ⅱ.
また、今回得られた回答の
A5別紙「各町村における要配慮者の分布」、
A12・13別紙「有事に使用可能なヘリの所在地と台数」、
A14・15別紙「道庁の把握しているヘリ発着可能地」を、状況の可視化のため地図上に図示した。

本記事では上記について列記する。泊原発近隣地域住民及び施設向けアンケートの集計結果を見て、必要なら別の視点からの分析も後日おこなう事とする。については、既にネット上に分析結果をアップロードしている。(本記事末尾にURL を示す。)

1.現時点での避難対策の不備を示す回答(及びそこから読み取れる不備)

A3・4…訓練不十分。施設入居要配慮者中、屋内退避でなく遠隔地へ避難した人の少なさ。これについては、2.以下に表も示す。(マシオンによる現地での聴き取りでは、「屋内退避訓練」の参加者の少なくとも一部に、参加の自覚がないなど 、訓練としての実質性の無さも明らかに。)

A7…施設内緊急事態発生の通報からオフサイトセンターへの人員集結までに時間がかかり過ぎる(3時間)。(PWRでは配管破断から約20分でメルトダウン、90分でメルトスルーするというのが電力会社による事故シナリオ。)

A9…医療チーム参集時間についての見積もりの甘さ。道路寸断等についての対策未完了。(「道路寸断等の特別な事情の無い限り、通常の移動に要する時間と大差ない」と。)
A10及びA11…住民及び医療・社会福祉施設向け避難用バスの確保、未完了。(「緊急時の円滑な確保に向けて北海道バス協会と協議中」と。)バス会社と独自に協定できた自治体にも課題があることが1月の現地調査で明らかに。(相手バス会社が他の自治体とも重複して 協定を結んでいるなど。)

A16…積丹半島沿岸地域の住民避難訓練について、以前天候上の要因で中止になってから、実施の目途が依然立っていないとの見方もできる。

A17・18…シャワーを使っての避難者の除染は準備されず。(訓練時にはそれらしい実演がありながら、実は現時点では想定もされていない。3.参照。)

A19…UPZ内住民及び滞在者の避難用ガソリンについて、備蓄も、必要量の見積もりもなし。「早めの給油」など、住民の平素の対策と自助に多くを依存。

A20…除染後の避難者の着替え備蓄なし。必要量の見積もりもなし。(「住民自身の持参」が基本。有事には「電力会社や民間企業等の協力を得て確保に努める」と。)(当日、自衛隊の方に伺ったところでは「市民の必要とする衣類は行 政が準備する」とのことであり、双方の話が食い違う。)

2.不備を数値的に示す具体的な例

A3・4に示された施設入居要配慮者の訓練参加形態。

【単位:人】

区 分
障害者施設
高齢者施設
その他施設
避 難
173
13
44
230
屋内退避
515
656
43
1,214
688
669
87
1,444


3.将来にわたり対応が不可能もしくは著しく困難な部分を示す回答、及びその「不可能な対策」

A22…「留め置くわけではない」としつつも、「準備が整い次第」という表現から、有事に介護を要する方々(手術直後の方等も含めて)が移送不可能な状態にある場合は、その状態が続く限り、被曝環境であっても避難させられないことを認めている。

(場合により、以下も。)
A7・9…オフサイトセンター・救護所等の人員は、間に合うように終結できない。

A17・18…除染テント等の設置訓練では自衛隊の協力を得たが、実際の有事には「救護所でのスクリーニング等は医療機関等により構成される医療チームが主体」「除染は基本的に脱衣と拭き取りによって行う」とし、避難者にはシャワーを使う大掛か りな除染は現状では不可能であることを示唆。
(にもかかわらず、訓練時には、市民に自衛隊によるシャワーテント設備を展示。これを見た市民にはいざという時、同様の処置が行われるとの誤解を与える恐れがある。)

A20…実際の有事には、準備なしの場当たり的な衣料調達。著しく困難か、不可能な可能性も。

追記1:
A22に関して、現地の基幹病院で、後日の調査時に伺ったところ、その病院で行う範囲で最も大きな手術を受けた患者は、最長で1週間から10日間の安静が必要となるとのこと。この期間は移動不能と考えられる。   

追記2:論点のずれた回答と、そこから読み取れること。 
A12・13…回答時に問題の趣旨が正しく伝わらず、ヘリの飛行可能な天候条件については回答になっていない。( 陸空運輸に詳しいある方の情報では、「ヘリの離陸は風速10m程度の横風で中止の可能性」と。) 

A14・15…ヘリの発着に使う公園の夜間照明について、ごく一部(訓練当日使用した公園)についてしか回答せず。マッピングしつつ、更に調べる必要があるか。
  
A23… 一日当たりの被曝量について回答せず。「7日で100mSvになる」範囲についてのシミュレーションのみ示す。一方で、最悪シナリオには至らずに済んだ東 電福島第一原発の事故でさえ、汚染は「最初の7日間」だけで済んだか?そもそも、この被曝量は「安全」のめやすになるか?シミュレーションの条件も問題 (常に、全ての方向に、気象データの平均の強さの風が吹くとしている)。
追記3:添えられていたヘリコプター関連情報のテーブルを解析してい て思ったこと。
同じ型式のヘリB-412EPであっても、定員が9~15人と変化し、また、巡航速度も時速210キロ超え、或いは180キロと変わっている。

疑 問…定員がパイロット・整備士等を加えて3~4人のヘリコプターは、災害救助に使えるのか?これらは状況偵察等、他の目的用ではないか。とすると、道庁の 回答で合計61機あるとされた「災害時の避難支援に使用予定の、各常駐場所のヘリ」は、実質18機少ない43機。これを加味すると、合計登場定員は761 人から696人に。パイロットを除けば運べるのは600人余りである。

尚、については、
A5別紙に基づいた、災害時要配慮者状況分析ファイル(Excel)
A12,13別紙、及びA14,15別紙に基づいた、災害時使用ヘリ及びヘリポート状況分析ファイル(Excel) を既にネット上にアップロードしています。